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「ブロークン・フラワーズ」

ジム・ジャームッシュ監督の「ブロークン・フラワーズ」(Broken Flowers: 2005年米)を観た。

ジャームッシュの映画を観ていると、無性にミネラルウォーターが飲みたくなる。普段は飲まない硬質のやつ。たぶん、海外旅行をしているような感覚になって、海外に行った時にだけ飲むものを思い出すからなんだけど。それは、映像がきれいだとかロードムービー感覚だとかいう意味だけではなくて、旅行くらいでしか体験することのない“疎外感”のようなものが感じられるということ。人の日常を、よそ者として眺めているような感覚。ジャームッシュ自身が自分を映画界の“アウトロー”と位置づけていることにも、関係あるかもしれない。

今回の主人公は、自分の家の中にいてもまるでよその国にいるような、自分自身の人生に対して疎外感を感じている男。コンピュータ事業で成功して悠々自適な暮らしができる身分だけれど、一度も家庭を持たないまま年老いてしまった元プレイボーイ。名前はドン・ファンならぬドン・ジョンソンジョンストンで、演じているのはビル・マーレイ、しかも常に黒ジャージ姿(赤ジャージじゃないのがせめてもの救いか?)ときたら、もうこれ反則技でしょう。所在なさげで妙に哀愁を漂わせた無気力なおっさん。その一挙一動がおもしろい、おもしろすぎる。ビル・マーレイをキャスティングした時点で、この映画の大半は出来上がっちゃったも同然だったんじゃない?

そんなおっさんのところに、謎の女性からピンクの封筒に入った手紙が届く。「あなたには19歳になる息子がいる」という。このミステリーに飛びついた隣人が、ドンを過去の恋人を訪ねる旅へと送り出す。おせっかいな隣人役のジェフリー・ライトが、また笑わせてくれた。手紙をご丁寧に虫眼鏡で調べ、エチオピアなまり?の英語で消印がどうのタイプライターの型がどうのとホームズごっこを始める姿に、ニヤニヤが止まらない。

ジャームッシュの全作品を観ているわけじゃないのではっきりとは言えないけど、今までなんとなく、スカした映画を撮る人というイメージがあった。今回はとても打ち解けた感じの笑いが目立つ。猫もかわいかったし。馬のぬいぐるみも笑えたし。音楽もよかったし。豪華な女優陣にはあまり興味が持てなかったけど。昔の恋人に再会した時の気まずさ、ぎこちなさが絶妙な“間”で語られるのがなんとも可笑しい。ちょっとしたきっかけで、自分の過ごしてきた時間とか人とのつながりとか、振り返ってみて、自分の立っている場所に気づいたり。物哀しいような、新鮮なような、そんな瞬間をそっけなく切り取ってみせるセンスの良さ。

観ている間よりも、観終わった後にじわじわ味が出てくる。さすがに、映画の登場人物たちに共感するほどの年齢にはまだまだ至らないけれど、少しだけ自分の人生を新しい目で見てみたい気持ちになった。きっと、見逃していたピンク色のものってたくさんあるんだよね。
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