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「ククーシュカ ラップランドの妖精」

タイトルの響きだけでなぜか気になっていた映画「ククーシュカ」(Kukushka)を観てきた。ロシアのアレクサンドル・ロゴシュキン監督作品だそうだ。じんわり、良かった。好き。

第二次大戦中のラップランド。仲間から裏切り者として置き去りにされたフィンランド兵と、同じように裏切り者として護送される途中で爆撃に遭ったロシア兵が、現地に暮らすサーミ人女性に助けられる。敵対する者同士がどうしようもない状況下に取り残されるという点ではダニス・タノヴィッチ監督の「ノー・マンズ・ランド」を思い出したが、こちらはお互いの言葉が全く通じないというのがポイント。しかも、サーミ人女性をめぐって三角関係が展開されてしまう。

こう書くと、複雑でシビアな話のように聞こえる?いやこれが、静かで美しい自然を背景にした、のんびりほのぼのおとぼけ系のお話なのです。ここで描かれるのは、言葉が通じないというもどかしさより、お互いが勝手なこと言って、相手のことは勝手に解釈して、それでなんだかコミュニケーションが成り立ってしまうという可笑しさ。

三角関係というのも、かなり滑稽。フィンランド人の方は、インテリのワカゾーでなかなか男前。(フィンランドといったらアキ・カウリスマキの映画くらいしか観たことなかったから、みんな無口で無表情というイメージだったけど、勘違いだったのね。勝手な思い込みはいけません。)ロシア人の方は、頭髪も寂しくなってきたオッサン。明らかに分が悪いのに、サーミ人のアンニに惚れてしまうのはこのオッサンの方なんだよ。当然、アンニが選ぶのはワカゾー。哀れなオッサン(笑) ロシアの作品だからか、意図的にロシア人の方をダメダメに描いてる感じなんだけど、でも、オッサンは実は詩人で、ワカゾーの方は、そうとは知らずに自分に詩が書けたらいいなぁ、なんて呟いてて。そういうところがニクい。

それに加えて、ヒロインのアンニがまたいいキャラ。ナチュラルで見た目もとってもかわいいんだけど、大胆というかあけっぴろげというか。戦争で夫を失った女性が、何の躊躇もなく兵士を2人も自宅に連れ込んで介抱してあげるか?と最初は疑問に思っていたのだけど、アンニさんにとっては、4年も男に触れてなかったのにいきなり2人もよ~!という願ってもない幸運だったらしいことがすぐに判明します。笑ったよ。

**以下、結末に関してネタバレ**

それにしても、3人はお互いのことを完全に勘違いしたまま。相手の置かれた立場はおろか、名前すらちゃんと知らないまま。誤解や憎しみが消えたわけじゃないし、オッサンとワカゾーが完全に許し合えたとも思い難い。それでいいの?と若干もやもやした気持ちが残ったのだが…最後のアンニの言葉が、もやもやを解消してくれた。

「ふたりとも勇気があって、いい狩人になれたのに…戦争で人殺しをさせられて、疲れきってしまった。でも、一緒に暮らすことになって、協力して…仲良くなれたのね。」

それはちょっと違うよ、アンニ…と言いたくなって、気づく。言って何になるっていうの?アンニの瞳には、そういう風に映っているのだ。彼女はただ、2人の傷ついた個人を見て、命を救った。そのシンプルな行為に比べたら、実はあの2人はこういう立場の人間で、当時のロシアとフィンランドとドイツの関係はこうで、なんて言うことがひどく虚しい。

**ネタバレおしまい**

ただ泣かせるだけの映画より、笑わせた後でしみじみ考えさせてくれる映画の方が好き。そんな人にお奨め。2002年の作品がどういうわけで今さら日本に来たのかは知らないけれど、こういう映画がたとえ遅くなっても公開されるというのはうれしいです。「ラップランドの妖精」という副題は要らなかったかな?とも思うけど。
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