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「ある子供」

ベルギーのダルデンヌ兄弟監督作品、「ある子供」(L'Enfant:2005年)を観てきた。

この人たちの映画、初めて観たけど、いつもこんな感じなんでしょうか?圧倒されるほどのドキュメンタリータッチ。虚飾のなさっぷりに、こういう映画もアリだったのか、と素直に驚いた。フィクションにここまで無造作なリアリティを感じさせる裏には、相当計算しつくした演出があるんだろう。

しかしまいったのは、手持ちカメラで映像がぶれること。普通に観る分にはそれほどひどくはないと思うんだけど、ミニシアターで席が前の方になってしまったので、見事に酔いまくり。というわけで、以下は、目が回ってムカムカした極限状態での感想になります。ああ、もう少しいいコンディションで観たかった…。

**以下、少しネタバレ**

一言で言ったら、子どもが子どもを作っちゃって困ったよという話。父親になった自覚のない20歳無職その日暮らしの男は、生まれたばかりの赤ん坊をこともなげに売り払ってしまう。

公式サイトの宣伝文句なんかを見ると、そんな心ない若者が痛みを知って愛に目覚めるまでの物語、みたいな印象を受けるんだけど、かなり違ったよ。こいつ、別に冷血なわけではなくて、ただ考えなしで心が成長してない困ったガキなんだ。子供売っちゃったけど、またできるからいいじゃん、と軽い気持ちで彼女に報告して、彼女がショックで倒れたらびっくりして焦って子供を取り返して。恥ずかしげもなく嘘ついたり、人に泣きついたり。腹へってるんだよぅお金貸してよぅ。って、オマエなぁ…。行動の基準が、あまりにも幼稚で唖然とする。でも…こういう奴、現実にいるよね…生々しいったらありゃしない。

主人公役のジェレミー・レニエとその彼女役デボラ・フランソワが、演技とは思えないほど完璧に、幼稚なダメカップルを演じている。あまりのリアルさに、ツッコミを入れることもできず、笑うことも怒ることもできず、ただひたすら、こういう若者が育ってしまう背景ってなんなのだろう、この時代の閉塞感はいったいなんなのだろう…と考えさせられてしまった。

最後の涙もね。彼の成長の証とは思いづらくて。私には、どうしようもない感情に流されるまま泣いている、どうしようもない奴に見えて仕方なかった。(もしかしたら、その時の自分の精神状態によって、違うものに見えるのかもしれないけれど。)でも、どうしようもない奴なりに、自分のどうしようもなさをさらけ出して、人とのつながりを求めている自分を自覚することができた。かすかな希望を見出すとしたら、そのへんだろうか。なーんて。スクリーン酔いが許す限りの思考能力をフルに使ってしまったよ。

そういえばこれ、去年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作なんだけど、その時の審査委員長ってエミール・クストリッツァだったんだよね。自分の作風とここまで違う(クストリッツァの手にかかると、たとえドキュメンタリーでもシュールにぶっ飛んじゃうから…)作品を選んだっていうのがおもしろい。きっとそこには何か深い理由が…などと無理やり考えようとしていたんだけど、今ちょっと調べたら、この作品を選んだのは他の審査員たちで、クストリッツァ自身はお友だちジム・ジャームッシュの作品を推してたそうだ。なんとなくほっとする(^^;
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ある子供/亀裂の効果

 日本の若者にも通じる、大人になりきれない”子供”を、ドキュメンタリータッチで描いた力作。手持ちカメラ、アングル、音声、小道具などを効果的に用いて、深読みのできる作品に仕上げてある。スリリングな先の読めない展開もすばらしい。ある子供(ネタバレ注意!)  2

  • 2006/01/30(月) 17:29:06 |
  • マダム・クニコの映画解体新書
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