FC2ブログ

Storytellers Cafe

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

「I WISH...」

ウズベキスタン映画祭で「I WISH...」(1997年ウズベキスタン・日) という映画を観てきた。

この映画祭のことは偶然知って、奇特なイベントがあるもんだなぁと。ウズベキスタン映画といえば、なんといっても「UFO少年アブドラジャン」があるじゃん。ていうかそれしか知らないジャン。映画祭をやるくらいだからきっと他にも有名な映画があるんだね、と思って調べてみたら、やっぱりメイン?はアブドラジャン…。しかも、同じズルフィカル・ムサコフ監督の他の作品も上映されている、ということでちょうど観てこれたのが、NHKが出資したとかいう「I WISH...」。

(以下ネタバレあり)

なんだろうこれ。「アブドラジャン」の成功に乗っかった二番煎じなのか?それとも、ムサコフ監督はこういう映画しか撮らない人なのか。「アブドラジャン」ではUFOという名の鍋が堂々と浮遊していたが、今回は皿が飛びました。まんま、皿。ふとしたきっかけで、願い事を実現させる特殊能力を持っていることに気づいたおじさんの不思議なお話。いってみれば、UFO少年がUFO中年になっただけのような。どこまで天然なのか測りかねる脱力なノリで、どんなに話に無理があっても何のその。のんびり突き進むゆるゆる展開。

しかし、いちいち笑いのツボにはまった「アブドラジャン」と違って、本作はなんか笑えなかったのが残念。「アブドラジャン」の衝撃は大したもんだったから、どうしても二作目は新鮮さが薄れるからかもしれないけど。こう言ってはなんだが、ネタに若干あざとさが感じられてきちゃって、ツッコミを入れる気も薄れるというか。そもそも「アブドラジャン」は、スピルバーグのETへのオマージュという壮絶にバカバカしい前提が効いていたんだけど、本作にはそういう設定上のおもしろさがないしね。あの驚異のローテク映像がほとんど見当たらなくなってしまったのも痛い。バックについてるのがソ連軍かNHKかの違いですかね…。

お話は意外とシリアス。望みをいくらでも叶えることができるという、ほとんど全能の力を持っていることに、ある日突然気づいてしまったおじさん。(それまでの人生でなぜ気がつかんかったんかい!と、ここは軽くツッコミ。)そんな能力があったら人生バラ色やりたい放題、かと思いきや、いろいろ悩みが出てくるんだよね。人の気持ちや生命まで操れてしまうことへの倫理的な抵抗感、世界中で起こる不幸を未然に防がなければという重たい義務感、身近な人をなかなか幸せにしてあげられない歯がゆさ…。特殊な力を持っているが故の哀しみ、というのは「アブドラジャン」でも描かれていましたが、本作はそこがもっとクローズアップされた感じです。個人的には、友人の役者の恋を絡めたあたりがベタなメロドラマみたいでどうかなぁと思ったけど。当初のノリからは想像もつかない辛気臭さで、だんだん誰が主人公だか分からなくなってくるし。

といっても。いろいろぼやいてはみたけれど、この映画、充分楽しめたし、全然嫌な感じはしなかった。とにかく、おじさんがいい人だから。願いが叶うことに気づいてまずやることが、家族や友人やご近所さんの望みを聞いて回って、どうしたら幸せにしてあげられるか考えることなんだもの。あれが欲しい、これが欲しいなんてまるで頭に浮かばない。ちょっとお金も要るな、と一度はお金を出現させてもみるけれど、それだって、お祝いごとが多いからね、なんていう理由。まるっきり無欲の人なのだ。それがいかにも当たり前のように描かれていて、わざとらしさがないところがすごい。望みを聞かれた側も、お前が健康で幸せなのが一番とか、まずはお前をもてなす酒と料理が欲しいとか、普通に言うんだよ。これだけでもう、ウズベキスタンって本当にこんないい人ばっかりなのかもという気がしてしまう。ムサコフ監督も、相当いい人なんではないかと。

映画は、そんな無欲のおじさんが、自分の少年時代からの夢を実現させたシーンで終わる。初めて自分のためにした、大きな願い事。それを叶えた地で、おじさんは願う。世界平和を、と。この終わり方、普通だったらすんごくわざとらしい気がすると思うが、こんなおじさんに言われたら素直に感心しちゃうのだ。心が洗われるようで、なんだかんだ、ええもん見せてもらったなぁと。

そうそう、このおじさん、東京の地震と津波も防いでくれたらしいですよ。ほんとにいい人だ。
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。