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「アートスクール・コンフィデンシャル」

「アートスクール・コンフィデンシャル」(Art School Confidential:2006年米)をDVDで観る。

たまたまレンタル店で目についたジャケット。うわ、見覚えがある!というイラストは、間違いなくダニエル・クロウズのコミックのもの。そういえば、「ゴーストワールド」の原作者ダニエル・クロウズとテリー・ツワイゴフ監督が再び手を組んだって話、大分前に耳にしてたなぁ。「ゴーストワールド」にノックアウトされた自分としては、すごく楽しみにしていたはずなのに、知らないうちに上映が終わってDVD化されていたとは…と、トホホな気分に。その後、実は日本では劇場未公開作でDVDに流れたのだと知って、さらにトホホになりました。そりゃないよねぇ。

だってすごくおもしろいじゃん、これ。

相変わらずイタい感じの人間ばかり出てきて、シニカルでちょっとグロテスクで、でもどこか身につまされるから切なくなってしまう。薄っぺらい教授役を怪演するジョン・マルコヴィッチやアンジェリカ・ヒューストンなど、俳優陣も曲者揃い。お約束的にスティーヴ・ブシェミまで、ノークレジットでちゃっかり登場。いつものブシェミっていうだけの何の捻りもない役なんだけど、いるだけでなんか得した気分にさせられるところがやっぱりブシェミ。ストーリー展開もしっかりおもしろくて意外性があって、痛烈にブラックな結末に唸らされる。美術学校を舞台にした本作、アートって一体何だよ?というテーマも実は真面目に掘り下げられていて、反芻すればするほど考えさせられるんだよね。

それにしてもダニエル・クロウズ、よっぽど美術学校にトラウマがあるんだろうな。「ゴーストワールド」でも、勘違いはた迷惑系な美術教師と主人公イーニドの挫折が苦々しく描かれていたけれど、今回の美術学校の真に迫った(と思われる)描き方ときたら。自分の世界にのめり込み放題な学生に、いいかげん極まりないボンクラ教授。アートだ何だと言っても、評価されるかどうかはコネとツキの問題。たまたま成功してネームバリューの出た人間は、途端にふんぞり返って嫌な感じ。世渡りが下手な自分はいつも評価の対象外、どう見ても下手クソなだけのあいつの絵が付和雷同的に絶賛される。こんな世界で大真面目にゲイジュツなんて志してたら、そりゃあ気が狂うかもね。実際に美術学校の経験のある人が観て、どう感じられるのかは分かりませんが。

美術のことは知らないけれど、学校っていう閉鎖的で内向きな空間は、多かれ少なかれ不条理で不気味な所かもしれない。自分も大学では何かとイタい集団に属していたから、この映画で描かれていることに、懐かしく苦々しい思いがしたよ。そういえば覚えがあるなと。授業そっちのけで自分の売り込みばかりしてる無責任教授とか、教授同士のよくわかんないライバル意識とか。学生も、自称学生作家とか、前衛アーティストとか、評論家気取りとか、おべっか使いとか、留年が趣味なのとか、いろいろいたな。何のリサーチもしてない的はずれな論文が「斬新な発想だ」とか絶賛されてて、はぁぁぁ?と思ったことも確かにあった。蘇ってくるイタい記憶。

そんなわけで個人的にも大いに親近感を持ってしまったこの作品だけど、どうやらアメリカ公開時に評価が激しく割れたみたい。(その結果の日本未公開?)どういうわけかとIMDbの感想などをちらっと見たところ、この映画がおもしろくないという人って、“どう見ても下手クソなあいつの絵”が本当のアートだって主張してる人が多いんだね。そうか、そう見えてしまうなら確かに致命的だな。単なる素人の稚拙な絵がアートとしてもっともらしく持ち上げられてしまういい加減さ、どいつもこいつもわかったようなこと言って、なーにがアートだよ!というのがこの話の肝の部分だと思うので。(実はあの絵、ダニエル・クロウズが美術学校時代に描いたものらしいというのがまた自虐的で笑えるんだけど。)あの絵は素晴らしいアートだから皆が褒めるのは当然で、本当のアートが解ってないのは主人公の方だ、と解釈してしまうと、確かにこの映画はつまらないかもしれないね。そして、そう思う人がいても仕方ないというところが、アートという概念の曖昧さであり難しさであって…。うーん、やっぱりこの映画の提示している問題は深いのだ。

(以下、結末のネタバレ含む)

私がひとつだけ気になったのは、ラストシーン。偽アーティストだったあいつの絵に熱を上げていた自分の浅はかさに気づき、本当に心に残る絵を描いてくれた主人公ジェロームの元に戻ってきた彼女。彼女の動機はジェロームに伝わったのかしら。その辺のフォローがなかった気がしたので、もしも彼が、世間と同じように彼女も自分が突然有名になったから戻ってきたのだと思い込んでいたら辛いなと。ブラックな結末でも、あの微笑みとキスだけは、ちゃんと彼女の気持ちが伝わった結果なのだと思いたい。

結局のところ、世間一般にもっともらしく支持されるより、たったひとりでも自分のアートを心から理解してくれる人がいる方が幸せなことのような気がするから。


アートスクール・コンフィデンシャル アートスクール・コンフィデンシャル
マックス・ミンゲラ、ソフィア・マイルズ 他 (2007/04/18)
ソニー・ピクチャーズエンタテイメント

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