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「それでも生きる子供たちへ」

イタリア映画祭で先行上映された「それでも生きる子供たちへ」(All the Invisible Children:2005年伊・仏)を観てきた。

7カ国の監督が、厳しい現実の中で生きる子どもたちの姿を描いた、ユニセフ、WFP後援のオムニバス映画。(この邦題はどうなんだろうね…とりあえず自分だったら、“それでも”生きるなんて言われたくない気がするなぁ。)テーマ的に似たような作品が揃いそうなものだが、各監督の個性が強烈なせいか、出来上がったものは見事にばんらばら。オムニバスとしては、なんかまとまりがない印象だった。ただ、1つ1つは見応えのある作品が多かったし、統一感がないからこそ変にチャリティ臭くならなくてよかったかな、とも思う。

…念のため、チャリティを否定するつもりはないし、この企画の意図するところにも共感するのだけど。正しい姿勢=いい映画っていうわけじゃないからね。観る立場としても、映画を観ただけで何か自分がいいことをしたような錯覚はしたくないなと思うし…。

以下、各作品について。(少々ネタバレあり)

タンザ メディ・カレフ監督
ルワンダで戦うひとりの少年兵。いきなり突きつけられるあまりにも過酷な現実に、言葉が出ない。淡々と静かな作品で、ひたひたと迫ってくるような空気が、逃れようのない現実感が強烈だった。これはね、正直観ていて辛かった。辛いけど、これを避けてしまったらこの企画はウソだよな、とも思った。

ブルー・ジプシー エミール・クストリッツァ監督
客席が静まり返ったところで、我らがお祭り男のご登場。さすがエミール御大は自分の役どころをよく心得ていらっしゃる。失恋ロバの次は、笑う七面鳥ですか。花嫁は意味なく飛んでくるわ、わけのわからん楽団はドカスカやかましいわ、恒例のお尻ショットは出てくるわ、てんやわんやでどえらい騒ぎさ。元々、どん底で人生を謳歌するような話ばかり撮ってる人だから。一歩間違えればただのアホになりかねないテンションで突っ走りすっ転びながら、さりげなく鋭い視線を投げかける。これぞエネルギーー!な巨匠技。

アメリカのイエスの子ら スパイク・リー監督
HIV感染した親子という、これまたとても重いテーマを扱いながら、テンポのいい会話でぐいぐい見せるスパイク・リー。内容は、そのままTVドキュメンタリーか道徳の教材にでもなりそうなもの。それもかなり声高なメッセージが聞こえてくるようなものなんだけど、鼻白む感じがしないで済んだのは、ちゃんと映画としてのおもしろさを大事にしているからのような気がする。この人の場合、現代的なノリのよさで明快に描くからこそ、まっとうな主張をエンターテイメントにできるんだね、きっと。

ビルーとジョアン カティア・ルンド監督
全作品中、最も子ども視点が貫かれた作品だと思う。廃品を集めて売って生活する幼い兄妹の、大冒険的日常。生意気盛りだけどお互いを思いやる兄妹の微笑ましさったら。落ち着きのない気まぐれなスピード感で描かれるのは、まさしく子どもの目から見た世界。だからこそ、最後に兄妹の視点を離れた時に見える、スラムと高層ビル群の対比が重くのしかかる。この監督、訴え方が本当に巧いなと。

ジョナサン ジョーダン・スコット、リドリー・スコット監督
これは個人的にダメだった…。他の作品が、程度の差こそあれ子どもの立場から現実を描こうとしているのに、この作品だけは全くの大人視点。それも、子どもの世界に勝手に救いを求めているように見えてしまって。言いたいことを最後に言葉でまとめてしまうあたりもどうかなぁと。違和感ばかりが残った。

チロ ステファノ・ヴィネルッソ監督
親に窃盗を強要される子、という設定がエミールさんと被っちまった感じだが(地理的にも最も近いし)、この監督にはまた独自の映像センスと音楽センスがあるようで。光と影の使い方、それにあのリズムはとびきりよかった。このオムニバス企画の立案者だけあって、内容はバランスよくお手本的でソツがなく、そのため印象が少々薄かったりもするのだけど。変にメッセージぶったものでアピールするのではなくて、あくまで自分のスタイルの映画の中で語る、という映画人としての姿勢に好感を持ちました。

桑桑と小猫 ジョン・ウー監督
黒髪の少女にフランス人形ときて、一瞬ホラー映画かと思ってしまったが(予告編で少女が痙攣してるように見えたのも妙に怖かった)そんなワケはなく。心の和むお話でした。裕福だけど愛のない家庭のお嬢ちゃんと、貧しいけれど愛されていた花売り娘、というコテコテの設定で、演出もかなりベタなんだけど、それが素朴な味わいに。何よりあの女の子たちの屈託のない笑顔。その力を全面的に信頼して、まっすぐ撮りました、という姿勢が印象的。

ゲスト挨拶に来ていたステファノ・ヴィネルッソ監督が、上映後の質疑応答で作品の順番について「決めるのが難しくて監督名のアルファベット順にしてしまったが、これで意外とまとまりがよかったと思う」と話していたけど、確かに、この順番でちょうどよかったように思えました。
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