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Storytellers Cafe

「愛しのタチアナ」

ユーロスペースで“カウリスマキのあかり”という特集上映をやっているのを発見。新作「街のあかり」公開記念として、今までの19作品を一挙上映するといううれしい企画。

私は「過去のない男」で初めてアキ・カウリスマキを知ったので、それからビデオやDVDを漁って長編は一通り観ているものの、映画館の鑑賞は未体験。これは、日程的に厳しいけど都合の許す限り観に行きたいなと。

とりあえず、これだけは絶対!と思って行って来たのが「愛しのタチアナ」(Pida huivista kiinni, Tatjana:1994年フィンランド・独)。 カウリスマキ作品は自分の中で当たり外れがほとんどないので順番がつけられないが、好きな作品をどうしても1つ選ばなくちゃいけないとしたら、これにする。どちらかといえば目立つところのない、小作品かもしれない。でも、音楽がとびきりによくって、いい年をした冴えない大人たちの話なのに青春の切なさが味わえて、なんだか愛しいロードムービー。

やっぱり好きだ。この奥ゆかしき寡黙ワールドに浸っているだけで、なんとなく幸せ。普段は見栄を張って威勢のいい無駄口も叩くのに、女性を前にした途端だんまりモードで何もできない男二人。ロケンローラー気取りウォッカ一気飲みのヘタレ男マッティ・ペロンパーが素敵なのは言うまでもないが、コーヒー中毒ママ依存症のミシン男マト・ヴァルトネン(確かレニグラの元リーダー)がまたいい味出してるんだよねぇ。

ペロンパーが可憐なカティ・オウティネン(この作品では本当にかわいく見える)に惹かれ、ヴァルトネンがママみたいなロシア女性に惹かれるのも納得。しかし、どちらも手が出せないどころの騒ぎじゃない。あまりにも内気で、あまりにも不器用で。せいぜいがんばって、ウォッカと紅茶のささやかな交流。こんな調子だから、何も起こらないままかと思いきや、ちゃっかりそうではない展開も心憎い。

最後のあたり、突然の車バーンのシーンから、ペロンパーのあのセリフ、そしてオチ…あの鮮やかな流れ。思い出す度に切なさがこみ上げる。何事もなかったかのように、またミシンを踏む日々に戻るヴァルトネン。夢から覚めた?現実に戻っただけ?いや、でもそこには、冒頭にはなかった何かがあるはず。

それは、インスタントコーヒーのようにほろ苦い、青春の記憶。


白い花びら/愛しのタチアナ 白い花びら/愛しのタチアナ
サカリ・クオスマネン (2002/05/24)
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