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Storytellers Cafe

カウリスマキ、レニグラ &ロケンロール

再び、ユーロスペースでやってる“カウリスマキのあかり”へ。本日はスマキ音楽祭(嫌な略し方だな)って感じで、2本観てきました。

1本目、スペシャルプログラム“アキ・カウリスマキ・ミーツ・ロケンロール”
ライブドキュメンタリー「トータル・バラライカ・ショー」と、短編(ミュージック・クリップ)4本セット。まずは、レニングラード・カウボーイズとレッド・アーミー・アンサンブル(赤軍退役軍人楽団)が共演する歴史的作品「トータル・バラライカ・ショー」(Total Balalaika Show:1993年)。ライブものは、やっぱり映画館だと迫力があって良いですね。赤軍楽団のあんまりの真剣さに押されてだんだんレニグラがウザく思えてくるのがアレなんだけど。赤軍のおっちゃん、歌うますぎですよ。

短編「ロッキーVI」(Rocky VI:1986年)「ワイヤーを通して」(Thru the Wire:1987年)「悲しき天使」(Those Were the Days:1991年)「俺らのペンギン・ブーツ」(These Boots:1992年)は全て未見だったので楽しみにしていたもの。特に「ワイヤーを通して」が拾い物だった。ニッキー・テスコってなんか好き。ミュージシャンとしては、Members時代を知らないのでレニグラのイトコとして歌ってるのしか見たことがなく何とも言えないが、役者として「コントラクト・キラー」や「アイアン・カウボーイズ・ミーツ・ゴーストライダー」で冴えないチンピラ役を嬉しそうに演じてるのを見て、好人物に違いないと。この短編では意外とかっこよかったです。そして「悲しき天使」のロバ反則。

2本目、「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(Leningrad Cowboys Go America:1989年)
“史上最悪のロックバンド”レニングラード・カウボーイズが、デビュー目指してやって来たアメリカからメキシコに南下するロードムービー。何を隠そう、生まれてから今までに観た映画の中で一番笑った作品といえばこれ。最初に観た時は、おかしすぎて何度もひっくり返ったよ。レニグラの見た目のおもしろさに加え、人を食ったようなシュールな笑い。言葉で説明しても全然伝わらないと思うけど、とにかくツッコミどころ満載の不条理なおかしさが次々と込み上げてくるわけ。

(以下ネタバレ)

例えばこんな場面。強欲マネージャーのマッティ・ペロンパーに「フード、フード」と陰気にねだるレニグラボーイズ。生タマネギを一袋あてがわれ、路上に座り込んで黙々とかじる面々…ああ、やっぱり言葉にするとつまんないんだな。

それでも懲りずに語りたくなるのがまた、この映画の不思議なところ。一人がひたすら無言でクルミを割り、周りがとり憑かれたようにそれを見守ってたりとか。マネージャーとのゆるい確執(革命→“民主主義復活”)とか。皆の食料を買うお金で素敵な姿になって戻ってきたメンバーを画面の外で袋叩きにしたりとか。そうそう、故郷のシベリアから憧れのレニグラを追いかけてやってくる村の若者も好きです。川でつかんだ得体の知れない生魚を何日も抱えて、やっと会えたレニグラメンバーにうやうやしく差し出すバカモノ…それいいかげん腐ってるんじゃん?かと思えば、そんな気味の悪い魚を嬉しそうに炙るレニグラもすごいな。

音楽ロードムービーとしても、この上なくハッピーな仕上がり。“レニングラード・カウボーイズのバラード”を歌う爆笑シーンで肝心の歌詞の字幕がついてなかったのが不満だけど。(カントリーを歌えと言われ、第49集団農場がどうの人民委員がどうのという素敵な歌詞で「二度と来るな」と言われる。)デビューするはずだったNYを早々に追われ、アメリカの田舎をどさ回りしながら土着の音楽を吸収していったレニグラボーイズは、メキシコで立派なウエディングバンドになれたのでした。すぐにテキーラにやられて落ちぶれるんだけどね…それは続編の話。さんきゅーべりーめにー。

サントラ集CD2枚組まで買っちまったぜ。ふふ。

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ/モーゼに会う レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ/モーゼに会う
マッティ・ペロンパー (2002/05/24)
ビデオメーカー
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「愛しのタチアナ」

ユーロスペースで“カウリスマキのあかり”という特集上映をやっているのを発見。新作「街のあかり」公開記念として、今までの19作品を一挙上映するといううれしい企画。

私は「過去のない男」で初めてアキ・カウリスマキを知ったので、それからビデオやDVDを漁って長編は一通り観ているものの、映画館の鑑賞は未体験。これは、日程的に厳しいけど都合の許す限り観に行きたいなと。

とりあえず、これだけは絶対!と思って行って来たのが「愛しのタチアナ」(Pida huivista kiinni, Tatjana:1994年フィンランド・独)。 カウリスマキ作品は自分の中で当たり外れがほとんどないので順番がつけられないが、好きな作品をどうしても1つ選ばなくちゃいけないとしたら、これにする。どちらかといえば目立つところのない、小作品かもしれない。でも、音楽がとびきりによくって、いい年をした冴えない大人たちの話なのに青春の切なさが味わえて、なんだか愛しいロードムービー。

やっぱり好きだ。この奥ゆかしき寡黙ワールドに浸っているだけで、なんとなく幸せ。普段は見栄を張って威勢のいい無駄口も叩くのに、女性を前にした途端だんまりモードで何もできない男二人。ロケンローラー気取りウォッカ一気飲みのヘタレ男マッティ・ペロンパーが素敵なのは言うまでもないが、コーヒー中毒ママ依存症のミシン男マト・ヴァルトネン(確かレニグラの元リーダー)がまたいい味出してるんだよねぇ。

ペロンパーが可憐なカティ・オウティネン(この作品では本当にかわいく見える)に惹かれ、ヴァルトネンがママみたいなロシア女性に惹かれるのも納得。しかし、どちらも手が出せないどころの騒ぎじゃない。あまりにも内気で、あまりにも不器用で。せいぜいがんばって、ウォッカと紅茶のささやかな交流。こんな調子だから、何も起こらないままかと思いきや、ちゃっかりそうではない展開も心憎い。

最後のあたり、突然の車バーンのシーンから、ペロンパーのあのセリフ、そしてオチ…あの鮮やかな流れ。思い出す度に切なさがこみ上げる。何事もなかったかのように、またミシンを踏む日々に戻るヴァルトネン。夢から覚めた?現実に戻っただけ?いや、でもそこには、冒頭にはなかった何かがあるはず。

それは、インスタントコーヒーのようにほろ苦い、青春の記憶。


白い花びら/愛しのタチアナ 白い花びら/愛しのタチアナ
サカリ・クオスマネン (2002/05/24)
ビデオメーカー

最近観たDVD&ビデオ 3

元々は毎月の覚え書き代わりにしようと目論んでいた「最近観た」シリーズも、気がつけば約6ヶ月ぶり…もはや何が“最近”観たものか思い出せないので、今回は苦し紛れにテーマを設けてみました。「あの人の監督デビュー作」特集ってことで。

終わりで始まりの4日間 (Garden State:2004年米)
ザック・ブラフの初監督・主演作。個人的にチキン・リトルの印象しかないもんだから、脳内でトサカとメガネを補いたくなって困ったが、一応こっちのが先だったのね。やっぱり父親との関係に悩んでて、負け犬仲間とほっつき歩いてる主人公をはじめ、世間に順応しきれない不器用な人たちの日々を軽ーく温かく綴った作品。なんだかナポレオン・ダイナマイト(バス男)in エリザベスタウンという感じで、斬新さはないんだけど、こういう映画には悪い印象の持ちようがない。ただ、すべてがいい感じに小さくまとまっちゃったがための物足りなさは、否めず。それもまた、ザックの持ち味なのかもしれないけれど。

終わりで始まりの4日間 終わりで始まりの4日間
ナタリー・ポートマン (2006/08/18)
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

トゥリーズ・ラウンジ (Trees Lounge:1996年米)
こちらはケチリーさんことスティーヴ・ブシェミの初監督・脚本・主演作。ブシェミ弟やブシェミJrまで出てくる魅惑のブシェミワールド。ずっと観たい観たいと思っていた作品、思いがけず近所のレンタルで見つけた時は泣くほどうれしかったんだけど、内容がまた泣くほど切なくて愛おしい。モラトリアム中年が情けないほど似合うブシェミ。アイスクリーム売りがはまり過ぎなブシェミ。やっぱり女子高校生泣かせなブシェミ、そしてボコボコにされるブシェミ…。ジャームッシュ映画で見かける顔がたくさん出てくる。粋なインディ映画なんだけど、変にアート系を気取ることなく、素直にさらりと撮った感じがいいんだ。センスいいなブシェミ。

ほえる犬は噛まない (Flandersui gae:2000年韓)
ここからは、東西鬼才の長編第一作目。東はポン・ジュノ監督。これねぇ、好きだ。すんごく好き。ドロップキックにボイラーキムさんに切り干し大根に謎の黄色フード応援団!思い出しただけでもヒクヒク笑っちまうぜ。いきなりこんなブッ飛んだ映画が作れるなんて、まったくジュノさんはどうかしてるんじゃないかと。格差社会、賄賂、手抜き工事…腐った世の中をこれでもかと皮肉りながら、その中でもがいてる一般庶民を見つめる誠実なまなざし。この映画、一見シニカルだったりブラックだったりするようで、実はすごく優しい。なんかピュアで憎めないオタクって感じだよね、ポン・ジュノって。だって「フランダースの犬」だもんな。

ハイル・ミュタンテ!電撃××作戦 (Accion Mutante:1993年西仏)
第一作目から邦題がえらいことになっていたスペインの鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア。内容もえらいことになってました。ヘタな例えだが、ジョン・ウォーターズとテリー・ギリアムが共同でタランティーノ映画をリメイクしたら出来上がったものがなぜか「不思議惑星キン・ザ・ザ」だった…みたいな感じ。基本的に流血どろどろスプラッタ系なんて苦手なんだけど、この人の映画だと気にならないんだわ。あまりにもバカすぎて。それでいて、ちゃっかり社会風刺して反骨精神を見せつけてくれるところも好きよ。あと、いつもオープニングのセンスがよいんだよね。サントラあるなら欲しいぞ。Mutante! Mutante! Mutante!