Storytellers Cafe

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「ボンボン」

ボンボン」(El Perro:2004年アルゼンチン・スペイン)を観た。

珍しく、直感で観ると決めた映画。普段から映画を観に行く回数が限られてるので、どうしても、監督が誰だからとか、誰が出演しているからとかで観てしまう。そういう選び方をしていると、ひどくハズす心配はないけど、純粋な驚きとか新鮮さはなかなか得られないんだよね。そんな中、めったにないことだけど、本能的にこれは観なければ!と。(去年だと、「ククーシュカ」がそんな感じの出会いだったな。)おんぼろ車を運転する人の好さそうなおじさんと、助手席にのそーっと座ったヘンな犬。この写真を観た瞬間、「!!」と来ました。おじさんと犬っていう組み合わせに弱いのかも。「過去のない男」とか。そういえばテーマも微妙に被るかな。

白くて大きいヘンな顔の犬。決してワンコなどという可愛いもんじゃなく、どちらかと言えばお犬様。“ドゴ”という種類らしい。顔つきがブルテリアっぽい?イメージはもっとおっとりしてそうだけど…などと予想していたが、実際ブルテリアとか闘犬を交配させた種類なんだって。けっこう危ない犬でやんの。

お気楽ほのぼの系の作品かと思っていたら、内容は意外とほろ苦い。(とりあえず、“ラテン版わらしべ長者”というコピーは全くアテにならず。)生きていくことの厳しさが、切々と描かれる。失業、貧困、孤独、重圧…。しかもそれは人間だけじゃないんだよね。人生は大変だが、犬生もまたずいぶんとタイヘンそうなんだ。闘犬、猟犬、ショー犬、種犬、負け犬、“痛みを感じない生き物”…お犬様もツライね。

こんな内容なのに全然息苦しくないのは、広々した大地の乾いた空気と、主役の1人と1匹の醸し出すゆるい味わいからくるような。もうね、見ていてきゅーんとしちゃうのです。お人好しで損ばっかりしてるおじさんの、なんとも慎ましやかな表情。そして、お犬様のなんともいえない堂々たるマヌケ面。どこにいようと何をされようと、何にもわかってないぞこいつー、という。実際のところ、すごい演技が必要とされているはずなんだけど、タレント動物的なものじゃない、わかってない動物そのものの動きや表情なんだよね。一体どうやって撮影したんだろ…。距離感の近さも、なんだかとてもいい感じ。親近感のわく距離で、生きてるものたちを愛おしく見つめているような。

出演者のほとんどが素人だったというのも、びっくりというか納得というか。おじさんのおずおずとした微笑み、あれはやっぱり演技で作れるものじゃないもんね。しかし、あのアクの強いドッグトレーナーのおっちゃんとか、じーんとくる語りを聞かせてくれた歌い手のおばさんまで素人だとは。皆さん、いい味出しすぎです。それにしても、お犬様。カンヌに出ていればパルムドッグ獲れたかもしれないのに!

ああ、でも賞なんて。自分がどう生きているかとは別のこと。時によって、もらえることもあったり、もらえなかったり。どっちにしても、大したことじゃないさ。
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「それでも生きる子供たちへ」

イタリア映画祭で先行上映された「それでも生きる子供たちへ」(All the Invisible Children:2005年伊・仏)を観てきた。

7カ国の監督が、厳しい現実の中で生きる子どもたちの姿を描いた、ユニセフ、WFP後援のオムニバス映画。(この邦題はどうなんだろうね…とりあえず自分だったら、“それでも”生きるなんて言われたくない気がするなぁ。)テーマ的に似たような作品が揃いそうなものだが、各監督の個性が強烈なせいか、出来上がったものは見事にばんらばら。オムニバスとしては、なんかまとまりがない印象だった。ただ、1つ1つは見応えのある作品が多かったし、統一感がないからこそ変にチャリティ臭くならなくてよかったかな、とも思う。

…念のため、チャリティを否定するつもりはないし、この企画の意図するところにも共感するのだけど。正しい姿勢=いい映画っていうわけじゃないからね。観る立場としても、映画を観ただけで何か自分がいいことをしたような錯覚はしたくないなと思うし…。

以下、各作品について。(少々ネタバレあり)

タンザ メディ・カレフ監督
ルワンダで戦うひとりの少年兵。いきなり突きつけられるあまりにも過酷な現実に、言葉が出ない。淡々と静かな作品で、ひたひたと迫ってくるような空気が、逃れようのない現実感が強烈だった。これはね、正直観ていて辛かった。辛いけど、これを避けてしまったらこの企画はウソだよな、とも思った。

ブルー・ジプシー エミール・クストリッツァ監督
客席が静まり返ったところで、我らがお祭り男のご登場。さすがエミール御大は自分の役どころをよく心得ていらっしゃる。失恋ロバの次は、笑う七面鳥ですか。花嫁は意味なく飛んでくるわ、わけのわからん楽団はドカスカやかましいわ、恒例のお尻ショットは出てくるわ、てんやわんやでどえらい騒ぎさ。元々、どん底で人生を謳歌するような話ばかり撮ってる人だから。一歩間違えればただのアホになりかねないテンションで突っ走りすっ転びながら、さりげなく鋭い視線を投げかける。これぞエネルギーー!な巨匠技。

アメリカのイエスの子ら スパイク・リー監督
HIV感染した親子という、これまたとても重いテーマを扱いながら、テンポのいい会話でぐいぐい見せるスパイク・リー。内容は、そのままTVドキュメンタリーか道徳の教材にでもなりそうなもの。それもかなり声高なメッセージが聞こえてくるようなものなんだけど、鼻白む感じがしないで済んだのは、ちゃんと映画としてのおもしろさを大事にしているからのような気がする。この人の場合、現代的なノリのよさで明快に描くからこそ、まっとうな主張をエンターテイメントにできるんだね、きっと。

ビルーとジョアン カティア・ルンド監督
全作品中、最も子ども視点が貫かれた作品だと思う。廃品を集めて売って生活する幼い兄妹の、大冒険的日常。生意気盛りだけどお互いを思いやる兄妹の微笑ましさったら。落ち着きのない気まぐれなスピード感で描かれるのは、まさしく子どもの目から見た世界。だからこそ、最後に兄妹の視点を離れた時に見える、スラムと高層ビル群の対比が重くのしかかる。この監督、訴え方が本当に巧いなと。

ジョナサン ジョーダン・スコット、リドリー・スコット監督
これは個人的にダメだった…。他の作品が、程度の差こそあれ子どもの立場から現実を描こうとしているのに、この作品だけは全くの大人視点。それも、子どもの世界に勝手に救いを求めているように見えてしまって。言いたいことを最後に言葉でまとめてしまうあたりもどうかなぁと。違和感ばかりが残った。

チロ ステファノ・ヴィネルッソ監督
親に窃盗を強要される子、という設定がエミールさんと被っちまった感じだが(地理的にも最も近いし)、この監督にはまた独自の映像センスと音楽センスがあるようで。光と影の使い方、それにあのリズムはとびきりよかった。このオムニバス企画の立案者だけあって、内容はバランスよくお手本的でソツがなく、そのため印象が少々薄かったりもするのだけど。変にメッセージぶったものでアピールするのではなくて、あくまで自分のスタイルの映画の中で語る、という映画人としての姿勢に好感を持ちました。

桑桑と小猫 ジョン・ウー監督
黒髪の少女にフランス人形ときて、一瞬ホラー映画かと思ってしまったが(予告編で少女が痙攣してるように見えたのも妙に怖かった)そんなワケはなく。心の和むお話でした。裕福だけど愛のない家庭のお嬢ちゃんと、貧しいけれど愛されていた花売り娘、というコテコテの設定で、演出もかなりベタなんだけど、それが素朴な味わいに。何よりあの女の子たちの屈託のない笑顔。その力を全面的に信頼して、まっすぐ撮りました、という姿勢が印象的。

ゲスト挨拶に来ていたステファノ・ヴィネルッソ監督が、上映後の質疑応答で作品の順番について「決めるのが難しくて監督名のアルファベット順にしてしまったが、これで意外とまとまりがよかったと思う」と話していたけど、確かに、この順番でちょうどよかったように思えました。
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