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Storytellers Cafe

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「ローズ・イン・タイドランド」

テリー・ギリアム監督の「ローズ・イン・タイドランド」(Tideland:2005年米)を観た。怪作。

あのつまんないハリウッド味の大作「ブラザーズ・グリム」の後に作った低予算作品というから、きっとギリアム、鬱憤晴らしてガハガハ笑いながら好き放題やったんだろうな、と期待して観に行くことにしました。期待してって、ダークでシュールでぷぷっと笑えるやつを期待してたのね。

ところがギリアムさん、泣かせやがったよ。なんちゅうことしてくれはるんですか。

ジャンキーの両親を亡くした少女ジェライザ・ローズが見た、過酷な現実→狂気のファンタジーの世界。序盤、バケモノとしか形容できない母親のジェニファー・ティリーと、粗大ゴミとしか形容できないロケンローラー気取りの父親ジェフ・ブリッジス(“ことぶき”って何やねん)が出てきた瞬間、「ラスベガスをやっつけろ」のノリを期待してしまったのだけど、そういう映画ではなかった。(余談ながら、ジャック・スパロウしか知らないでジョニデなどと騒ぐお嬢さん方に、ラスベガスをやっつけてるジョニデさんをなすりつけてやりたい意地の悪い衝動に駆られる今日この頃。)クズな親を持った不幸な子どもが、どんなヤバイ現実を生き抜くことになるかを、子ども視点で描いたお話。

きれいごとを言うつもりはないが、映画でも何でも、何が嫌いって、むやみに子どもを傷つけたり不幸にする話ほど嫌いなものはない。いたいけな子どもを被害者にして同情を誘うところが許せないと思うんだけど、もちろんこの映画は、そんないやらしさとは無縁どころか、そういう偽善を嘲笑うような展開だった。ギリギリの状態でも逞しく生きていく子どもの強さに絶対的な信頼を置いて、大人のだらしなさや社会の腐ったところを痛烈に風刺する、けしからんほどしたたかな作り。世の中のヤバさをシュールに笑い飛ばすセンスはさすがモンティ・パイソン。

でもね、それでも私は途中から笑えなくなったのよ。メルヘンな情景の中でグロいイマジネーションで遊びながら、バービー人形の頭を唯一のお友だちにして「あたしは幽霊」と言う女の子のいる現実が辛くて。現実的に言うと、ジェライザ・ローズは典型的なNeglected child。お腹も空かせているけれど心の飢えの方が深刻で、そういう子に手を差し伸べるまっとうな大人がいない社会は本当に病んでいる社会なんだと思う。ここまで極端じゃなくても、似たような境遇の子はきっとたくさんいるんだよね、アメリカにも日本にも。ぶっ飛んだギリアム作品でこんな社会派メッセージみたいなことを言うのはおかしいかもしれないが、ギリアムの狂気の奥には現実社会を厳しく見据えた正気があると思うんだ。

ジェライザ・ローズ役のジョデルちゃん(当時9歳)がまた、憎たらしいほど上手くて、そのリアルさに泣けた。自分が孤独な子どもだったというつもりはないけれど、子ども特有の閉ざされたファンタジーというか、そういう世界には痛いほど覚えがあるし。

映像は繰り返し堪能したいほど素敵でも、切なくてもう二度と観られないかも、結末によっては、この映画一生のトラウマになってしまうかもと思っていたところ、最後はすごい展開になって、とってもきれいなその締め方に、すげーなギリアム、と改めて涙。たとえば9.11後の光景なども連想させるその展開は、今のアメリカを非常によく表わしているようで、久々に映画でこんな圧倒的なパワーを見せつけられた感じがして、私はなんだかすっかりやられてしまって、放心状態のままエンドクレジットを眺めていたのでした。
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Dream On Silly Dreamer

超いまさらだけど。2月にDVDの出た“Dream On Silly Dreamer”(公式サイト)の感想を。

そもそも“Dream On Silly Dreamer”って何?という話は、いつぞやのDiaryに書いたりなどもしてますが、2002年にディズニーが手描きアニメーションを止めると決定した際、Walt Disney Feature Animationを解雇されたアニメーターたちが作ったドキュメンタリーです。

2月にDVDで観てすぐに感想が書けなかったのは、気持ち的にちょっと凹む内容だった上に、字幕がついてなかったので一回観ただけじゃいまひとつ理解できなかったから。(リージョンフリー仕様なら、英語字幕くらいつけようよ…。)で、ようやく重い腰を上げて2回目にトライして、特典映像もひと通り観たわけだけど。評判通り、いいドキュメンタリーでした。できることなら、長編の長さにして、全体をもう少し掘り下げてほしかった気もするけれど(そのへんの物足りなさを映像特典がある程度補ってくれてはいるが)、よくまとまった中編。自分たちの身に降りかかったことを、よくここまで冷静に見つめて映画作品に仕上げることができたなと思う。

内部の暴露話になることもなく、単なるノスタルジーや自己憐憫に陥ることもなく、ディズニーアニメーションの繁栄と衰退の過程を真摯に描いているからこそ、価値のあるドキュメンタリー。たとえこのへんの話に興味がなくても、普遍的なテーマを見出せると思う。とある会社の信念に惚れ込み、寝る暇も削って家庭を犠牲にしてまで働いてきた従業員たちが、会社を大きく育て上げた結果、不必要な存在になったと解雇されてしまう。それ自体、どこの業界でも起こり得る現実的な悲劇だし。

さらにおもしろいのは、この作品のテーマが、今のアメリカの映画産業そのものが陥っている状況への問題提起とも受けとれること。アートを追求することをやめてビジネスだけを追求するようになった結果、ハリウッドはジャンクフードのようなチープな映画を大量生産するようになり、観客はただの消費者になり下がってしまった。そういう映画産業の悲しい現実を象徴しているのが、このドキュメンタリーに描かれたWDFAの悲劇だと思う。

この作品でちょっとすごいなと思ったのが、ディズニーの転落のきっかけはDirect-to-video(俗にいうCheapquel)商法であるとはっきり言い切ったところ(そういう商法に乗せられていた消費者として、耳が痛かったり…)。儲け主義に走り始めた経営側と、純粋に映画を作りたいアーティスト側との溝。ストーリーテラーではない、アニメーションに興味もないマーケティングの人間からストーリーを押しつけられる苛立ち。このあたり、現場の声だからこそ生々しい。衝撃的だったのは、私たちにとっては夢の象徴のように見える、有名なソーサラーハットのアニメーションスタジオが建設された時のこと。それまで古い倉庫のスタジオで楽しそうに仕事をしていたアーティストが、新しい豪華な建物に入って発した言葉が「ガス室みたい」。アーティストのためではなく、経営の宣伝のために作られた建物だということがすぐに判ったらしい。実際、ここで手描きアニメーションの息が止められる日が来たことを思うと、とても重い。

それでも、このドキュメンタリーに出てくるアーティストたちは、経営者の誰かを批判したり、恨み言を言ったりしない。WDFAへの思い入れとスタジオでの思い出を心から楽しそうに語る。この映画のスタイル自体、ディズニーアニメーションへのオマージュになっていて、そういう愛が感じられるからこそ、心を動かされるし切なくもなる。アーティストたちの象徴であるDreamerの人形の、いかにも手作りらしい素朴な顔に浮かぶ涙に、思わず貰い泣きしそうになった。

しかし、考えてみると私が愛着を持っているWDFA作品って、みんなWDFAに逆風が吹き始めてからのものなんだな。やっぱり、逆境にいるからこそ光るというものがあるんだと思う。そういう意味で、優良企業ですべてが順調に見えるPixarの作品にはあまり魅力を感じなかったり。Underdogに対する偏愛かもしれないけれど、どん底から這い上がる力によってしか作り出せないアートがあると思うので。すべてのDreamerに、WDFAに残って奮闘している人にも、外の世界で別の道を歩き出した人にも、“I wish you the best”と、心から言いたい。

ディズニーアニメーションを愛している人、かつて愛していた人に、ぜひ観ていただきたい作品。DVDはAmazon.comで購入できます。
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