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Storytellers Cafe

「ニュージーズ」

アメリカでは公開時大コケしたものの、今ではかなりの人気を誇っているというディズニーの実写ミュージカル「ニュージーズ」(Newsies:1992年米公開、別名 The News Boys)。アラン・メンケンが手がけたという歌が聴きたくてDVDを購入してみた。

19世紀末のニューヨークで、“ニュージーズ”と呼ばれる新聞売りの少年たちが実際に起こしたストライキをベースにした映画。ミュージカルとしては、うーん…期待外れ、だったかな。メンケンの曲(歌詞は「グーフィー・ムービー」のジャック・フェルドマン)は、もちろん悪くはなかったんだけど、楽しみにしていたほどでもない。ひとつひとつの曲はメンケンらしくて、時々はっとするメロディーを持ってはいるものの、他のミュージカルに比べるとぱっとしない印象だ。

なんでもこの作品、製作途中でミュージカル路線に変更になったため、メンケン&フェルドマンは急遽頼まれて短時間で歌を作らなくてはならなかったそう。メンケンって、何日もピアノに向かってじっくりと曲を生み出していくタイプの人だと思うので(って勝手な思い込みだけど)これでは本領発揮できなかったんじゃないかなぁ。それに、ミュージカルは、企画が始まった時点から音楽とプロットを一緒に練ってこそ、歌でストーリーを進めることができるもの。“ハイ、このへんで1曲”っていう後付けの歌はやっぱり不自然だ。それ以前に、この作品の場合、題材がミュージカル向きじゃない気もするんだけれど。

主演のクリスチャン・ベイルの歌唱力は、少なくともメル・ギブよりはずっとマシだったようだ。難しいバラードも果敢に歌いこなした感じ。踊りも、がんばって複雑なステップに挑んでいる。…という印象を観客に与えてしまった時点で、ミュージカルの完成度としてはどうなのよ?という気もしなくもないが。その他の男の子たちはとても上手なんだけど、ミュージカルシーンの見せ方のせいで、雑然とした印象になってしまっている。狙いのある撮り方なのかもしれないが、エネルギッシュというよりはバラバラでごちゃごちゃな感じ。

それから、アン・マーグレット演じる歌姫の存在意義が不明だった。この人がよくわからない凄みを効かせて歌い踊るナンバー“High Times, Hard Times”ってラジー賞最低オリジナルソング部門受賞しちゃってるし…。これがまた、気の毒だけど納得できちゃったりするからトホホだ。(ちなみにこの他にも、アン・マーグレットの最低助演女優賞や最低作品賞含めて計5部門もラジーにノミネートされてたり。)

しかし、ドラマとしての「ニュージーズ」は、予想外におもしろかった。

弱い立場の者に共感するという視点はディズニーの王道なんだけど(ベイルの役とアラジンが特にダブる)、そこにダビデとゴリアテの喩えを持ってくるあたりがニクい。ストを提案した少年の名前がデイヴィッド(=ダビデ)だったり、少年たちがビー玉で警官を撃退したり。メディアや司法の巨人に挑む勇気ある子どもたち、という図式を際立たせている。さすがは後に「ノートルダム」や「ターザン」を書いた脚本家たち、上手いなぁ。

大人たちの描写が、ニュージーズの味方=いい人、敵=悪人と区別されていて、賄賂事件が絡んできたり、というあたりはいかにも単純な感じなんだけど、喧嘩っ早くて教養もない少年たちが団結していくまでの過程が、なかなかリアルでいい。ひとりのヒーローがすべてを変えるんじゃなくて、集団だからおもしろいんだな。リーダーのクリスチャン・ベイルは行動力とカリスマ性はあっても頭はあんまりよくなさそうで、実際に組織のブレインになってるのは真面目で目立たないデイヴィッドだし。小柄だけど切れ者っぽいブルックリン地区のボスの子とか、楽天家だけどプライドはしっかり持ってる松葉杖の子とかもいいキャラだった。

メディアの持つ力が大きなテーマになっているのも興味深い。市電のストならニュースになるけれど、新聞社相手にストを起こしても新聞の記事にしてもらえないというもどかしさ。今だったら、ネットを通じていくらでも個人が情報発信できるけど、当時は新聞に載らなければ、何もなかったのと同じ。ニュースにならなければ世の中を変えられない。報道ってこんなに大切。情報が過剰に行き交う現代の私たちにとっても、考えさせられる話だと思う。

最初は新聞の卸値が10分の1セント上げられたことに対してのストだったけど、それがいつの間にか、お金の問題だけじゃなく、自分たちの存在価値を世の中に認めさせるための闘いになっていく。(史実として、ストによって卸値が下げられることは結局なかったそうだし。)ストを通じて、ニュースを伝える仕事に誇りを持ったニュージーズたち。そんな彼らの姿もやがては、ニューススタンドの出現などによってニューヨークの街から消えていくのだそうだが…それはまた別のお話。(スタンド形式の売店にニュージーズの名をつけてしまったTDSって、やっぱりダメだ…)

歌と踊り抜きで90分くらいに収めた方が見応えがあったんじゃないかとも思ったが、最後に、スペシャルサンクスとしてハワード・アシュマンの名前が出てきたのには、ほろりとしてしまった。
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